夢経さんの家

ツーリング雑記


ツーリング雑記(古い二編)
 平成十一年の、ツーリング記録が出てきた。二編をまとめて残しておくことにした。

    山梨にツーリング

 九月十一日。自宅を出るときは、小雨がちらついた。今日のツーリングは、ガソリン代込み、一人二千円予算の貧乏旅である。飯能の岩さん宅に集合、4台で出発。
 岩さん、藁さんと私は中年ライダーである。今日は二十代前半の、若い女性が同行している。今年免許を取得したばかりのIさんだ。彼女を二番手にして走る。秩父を抜けて雁坂峠を越えて山梨まで行く。帰りは大菩薩ラインで柳沢峠を越え、丹波山から奥多摩に抜ける予定になっている。
 飯能を出るとき、雨は止んでいた。秩父を過ぎて、武州日野付近のスーパーで、買い物とトイレタイムになった。ペットボトルのお茶や菓子を買ったり、地図を確認したりした。
 走り始めて白久を過ぎたころだったろうか、ポケットの財布がないことに気が付いた。
(しまった、さっきのスーパーのトイレに置いてきた)
先頭車まで走り抜けてバイクを止めた。
「財布を忘れてきたのでスーパーまで戻ってみるから、大滝の(道の駅)まで行って、少し待っていてほしいんだけど」
「わかった。もし財布がなかったら、少しは持っているから大丈夫だよ」
「とにかく行ってくるよ」
 来た道を急いで戻り、スーパーに駆け込んだ。
「さっき買い物したとき、トイレに財布を忘れたんだけど、届いてないですかね」
レジで尋ねた。
「ああ、さっき誰かが『忘れ物』と言って届けてくれましたよ」
「よかった。財布の中に私の免許証がありますから、本人と判るはずです」
財布の中を確認しながら、
「まちがいありません、財布をどうぞ」
「ありがとうございます」
こんな一幕があった。
 道の駅でみんなに合流して先を急いだ。天気は完全に回復していたが、雁坂トンネルの中はけっこう寒い。開通して間もないトンネルで、明るくてきれいだ。通行料金は六百五十円だった。
 雁坂トンネルを抜け、山梨市に向かい十八キロくらい走ると窪平トンネルがある。これを出て右折。西に六キロくらい走り、牧丘町営の鼓川温泉でエンジンを切った。町民以外の入浴料金は五百円だった。泉質はPH九・九のアルカリ性単純泉で、肌がすべすべになる。湯に浸かった体がウナギのようだ。風呂からあがって昼食。Iさんが作ってきてくれた、大きな握り飯をほおばる。温泉の付近は巨峰であろうか?葡萄の香りが漂う。風呂上りは気持ちがいい。体を包む風には、すでに秋の空気が混じっていた。
 帰路は大菩薩峠を右手に、塩山から丹波山を抜け青梅に出る。来月の末頃から始まる紅葉は、山道を染め抜き見事なものだろう。今はまだ早く、色が褪せ始めた緑色の山道が続いている。街道のカーブを、4台のバイクが一列につながり、きれいな曲線を描いてゆく。初心者のIさんも先頭に遅れることなく、きれいにコーナーをおさえている。風は少し冷たい。
(彼女にとって、良い思い出の一コマになればいいな)
と思いながらスロットルを回す。
 すでに私の思い出回路には、財布を取りに戻った失敗が深く刻まれていた。

    末娘とローラーコースターへ

 九月二十五日。台風18号が通り過ぎて天気は回復した。小学校五年になる末娘と、おにぎりをもってツーリングに出た。奥多摩の丹波山にある、日本で一番長い(二五〇メートル)ローラーコースターに乗せてやろうと思ったのだ。途中、青梅にある鉄道博物館で休憩を取った。本物のSLが多く展示されているが、小学高学年には物足りない施設である。
 青梅を出て日向和田まで来ると、空気が変わり山道らしくなってくる。奥多摩湖を越えて丹波山まで、適度のカーブが楽しめる。子供が乗っている分、多少カーブで重さを感じるが問題はない。途中は温泉施設が点在したりして、手軽なツーリングコースだ。
 ローラーコースターの料金は、大人200円子供100円で乗り放題だった。要は滑り台だから、降りるのは快適だが、滑り始めの場所に行くには少々疲れる。山道を歩いてコースターの乗り場まで行かなければならない。一回滑ればもうたくさんになった。近くには村営の釣り場があり、遊漁料金は2600円だった。少し高いが、鱒を10匹も釣れば元は取れるだろう。釣った魚でバーベキューをしている人たちもいる。釣りはせずに、おにぎりを食べて帰途に就いた。
 秋になると街道は見事に紅葉して美しく輝く。今の時期は空いていて走りやすい。帰りは、軍畑から成木街道に抜ける。道は狭いが青梅市内を通過しないので、とにかく帰りが早い。しかし、残念ながら青梅を回らないと、名物の(へそ饅頭)は買えない。