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平成六年五月 序 文 約20年の長期にわたり、連れ添ってきた痔核と決別をするに当たり、 この譚を記するものとする。 (平成6年5月) 先ず疾病について、3種類ある痔疾患の、概略を説明する。 れっこう 1 裂肛(キレ痔) 肛門が切れたものである。硬い便の通過や、肛門の無理な広がりによっておこる。初期では、排便時の痛みと少量の出血があり、進行すると排便後に、長時間の痛みが続くようになる。また、裂肛は痔瘻になったり、肛門が狭くなる事がある。 薬を使ったり、便秘をしないようにすれば、裂肛はおさまるが、慢性化したものは手術が必要である。 日常生活の注意点 1)便秘をしない。 2)患部をいつも清潔にする。 3)アルコールはやめる。 手術方法 日常、よく切れてしまい出血する部分は、肉が盛り上がり、肛門が狭くなっているので、これを切り取り、皮膚を移植する。 じ ろう のうよう 2 痔瘻と肛門周囲膿瘍 肛門の奥から細菌(大腸菌等)が入って、肛門周囲が化膿したものが肛門周囲膿瘍である。膿瘍が破れるか切開して、肛門の奥と交通した管が出来たものが痔瘻である。肛門周囲膿瘍は痛みが強く、膿が多くなると熱も出るので切開が必要である。また、痔瘻は薬では治らず、化膿を繰り返し長い間に複雑化したり、癌化(痔瘻癌)することもあるので、手術が必要である。 日常生活の注意点 1)下痢をしない。 2)膿瘍は切開を受ける。(早い時期に根本手術を受ける) 3)アルコールはやめる。 手術方法 第1段階で筋肉部に出来た膿を撤去する。入院が必要な場合と、不必要な場合と症状により異なる。この段階でひとまず、一旦痛みは治まる。 第2段階で(第1手当てから何日か後)切開をし、膿の溜まる部分、膿の流れ出る管になった部分を切除して縫合を行う。この管になった部分が、外部に向かっているものは比較的楽な手術ですむが、内部に向かっているものは厄介な手術となる。 また、内部に向かっている痔瘻は、初期段階で原因が分からず、しばしば外科医に掛かり、誤診を受ける事がある。肛門の痛みは、やはり専門医に診察してもらう事が肝要である。 3 痔核(イボ痔) 多くの場合は、この疾病である。静脈の血流が悪く、うっ血し、更に拡張したものが痔核である。痔核は発生する場所によって、外痔核と内痔核に分けられる。 外痔核 ……… 肛門外部にできる。 突然血の塊ができ、腫れて痛みを生じる。薬により治るが、痔核が大きかったり痛みが強いものは切除するか、血の塊を取り除く必要がある。 内痔核 ……… 肛門内部にできる。 初めは出血があるだけであるが、進行すると痔核が肛門外へ脱出する(脱肛)ようになる。初期の痛み、出血、腫れなどの急性症状は、薬を使ったり風呂に入ったりして、うっ血や炎症がとれてくれば治まる。しかし、痔核が簡単に脱出したり、脱出した痔核が戻りにくい程度になると、手術が必要である。 出血及び痛みには関係なく、次の4段階に分類される。 第1段階 痔核が肛門から出ない。 第2段階 痔核が肛門から出てしまうが、自然に戻る。 第3段階 痔核が肛門から出てしまい、押し込めれば戻る。 第4段階 痔核が肛門から出て、戻らない。 上記の第3段階以降は切除が必要である。また、各段階は時間と共に、その上の段階に進行するので、注意観察を要する。 日常生活の注意点 1)便秘をしない。 2)下痢をしない。 3)排便時間を短くする。(3分程度が理想) 4)患部を冷やさない。 5)肛門をいつも清潔にする。 6)軽い運動をする。 7)腹圧のかかる姿勢を長時間とらない。 8)アルコールはやめる。 手術方法 肛門を押し開き、切開し痔核を摘出する。切開箇所は半分だけ縫合し、残り半分から膿と、ばい菌を肛門外に出させるようにして、肉の盛り上がりを待つ。 (この部分が、手術後から完治まで、常に痛む箇所になる) 毎日頻繁にガーゼを交換し清潔に保つ。 この手術と療養については、筆者の入院日誌に、詳しく記す。 ☆ 手術後と、日常生活のポイント @患部はいつも清潔に。 A便意を我慢しないで、きちんと排便。 B排便はいつも同じ時間にする習慣をつける。 C便秘と下痢に注意。 D排便時間は短く。 E暴飲暴食はさけ、腹八分目に。 F食事は片寄らず、規則正しい時間に取る。 G睡眠は十分に、ストレスをためない。 H適度な運動で体力をつける。 I手術後は通院して、経過をチェック。 ☆ 便秘改善のポイント @便意を我慢しない。 A食物繊維を多く取る。 B軽い運動をする。 Cストレスを解消する。 D睡眠を十分に取る。 E朝起きがけに、コップ1杯の水を飲む。 F1日3食、規則正しく食事を取る。 G下剤は正しく使う。 ☆ 便秘を悪化させる食品 ※ 渋い茶、ココア、しぶ柿、赤ぶどう酒 (多量のタンニンが便秘を悪化させる) ※ 肉類に片寄った食事 (消化吸収がよいため、便の量が減少し大腸の動きが弱くなる) ◎ その他 雑記 人間以外の動物は痔にならない。 痔核ができる理由は、イギリスと日本にそれぞれの学説がある。日本の学説は肛門の静脈窟の流れが悪くなり、痔核をつくり、障害を引き起こすとされている。 肛門静脈の血液の循環を良くするには、物理的に血管の位置を心臓より高い位置にすることが有効でる。うっ血による痛みを取るのに、うつ伏せに寝て肛門の位置を高くすると、うっ血による痛みが和らぐ事でもうなずける。 人間以外の哺乳動物の体型を見ると、四足で立ち、肛門が心臓より上に位置しているのが普通である。だから、常に血液の流れが良く、また、じっとした姿勢でいる事は希であるため、痔にはならないのである。 一般に心臓より下にある静脈は、血液逆流を防ぐ弁のような機能がついている。だから、足の先に血液が落ちて行かないのである。これは、逆立ちをしても食物を飲み込めるという、状況に似ている。 しかし、肛門周囲の静脈は、この弁がついていない。肛門は、心臓より高い位置にあるために必要ないのである。人間が昔、四足で歩いていた名残が、こんな所に残っている。人間にとって肛門は、心臓より低い位置にあり逆止弁が無いため、うっ血を起こし易い。それに加え、長い時間同じ姿勢で座っている事は、更に静脈を締め付け、痔疾患を引き起こす原因となる。 鳥類、爬虫類、両生類、魚類等、哺乳類以外の動物は、肛門が心臓より下に付いているケースが多いのだが、これらの動物が痔で苦しんでいるかどうか、報告がないので、今回は考察を省く事にする。 入院諸内容(私の実績) 入院 病院名 所沢肛門病院 所 在 地 所沢市小手指町1−3−3 TEL 0429-26-7511 入 院 日 数 平成6年5月5日午後 より 5月15日午前 まで 病 院 日 課 起 床 6:00 検 温 6:00 11:00 18:00 食 事 8:00 11:30 16:30 点 滴 9:00〜 (手術後7日間) 風 呂 8:00〜9:20 12:50〜2:30 診 察 14:00〜15:00頃 消 灯 21:00 面 会 時 間 平 日 14:00〜20:00 休 日 11:00〜20:00 入 院 費 用 6人部屋、健康保険(社会保険本人)で、約60,000円 ★ 入 院 日 誌★ ◎ 第1日目 5月5日(木) 入院日 普通に朝食を取り、昼食にはパン1切れを食べた。 PM1:00入院をする。 病院より貸与される寝巻き(ガウン)に着替える。入院の概略と各部屋の説明を受けた。いよいよ病院生活が始まるのだ。 腸の中をきれいにするために、下剤2リットルを飲む。先ず半分の1リットルを1時間かけて飲むのだが、容器のビニイルの臭いが強く、飲みにくい。味は薄い塩味である。飲み終わると浣腸を行い、ここで一度排便をする。 さらに強い下剤を150CC程飲む。続けて残りの1リットルを1時間かけて飲むのだが、途中何度も排便をする。排便は次第に水状になり、やがて透明になる。 その夜は流動食がでたが、食欲はない。水分は自由に取って良い。 私は大腸ポリープを摘出するので、上記のような経過となるが、痔疾の手術だけの患者は下剤750CCを飲むだけでよい。ただし、その後手術前に浣腸を行う。 ◎ 第2日目 5月6日(金) 手術日 朝7時より水分の摂取は禁止される。当然食事は三食とも無い。 AM9:30大腸ポリープの切除手術を行う。 肛門より小指程の太さの内視鏡を挿入する。手術台の上に横向きに寝て、膝をやや抱え込む姿勢だ。内視鏡は肛門から直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸を通り、上行結腸先端の盲腸付近まで進む。腸の曲がりが特に急な、横行結腸の左右が痛い。 盲腸に到達後、少しづつ検査しながら引き抜く。内部の画像はテレビに映し出され自分でもよく見える。腸の中は蛇腹状になっており、焼き鳥のシロそのものである。毛細血管が覆っているのが良く見える。 小さいポリープは、ヒトデのような触手で掴み、電気を流し灼き切る。腸の中は神経がなく無痛である。3mm程度の大きさになると、細いワイヤー状の線で絞り込み、電流を流し灼き切る。 私は2個のポリープを摘出し、時間は30分程度であった。 摘出した肉片は細胞分析に出される。 PM2:30痔核切除の手術が始まる。 下着をすべて脱ぎガウン1枚になる。手首付近の血管に太い針を刺し、点滴を始める。この針は結構痛い。 PM3:00過ぎ、点滴を自分で持って、手術室に入る。裸になり台の上に腰掛け、そのままかがみこむ姿勢をとり、脊髄に麻酔を射つ。最近の脊髄麻酔はあまり痛くない。やがて下半身が麻痺てくる。 手術台の上にうつ伏せに寝て、両足を広げる。肛門の周囲にいくつもの麻酔を射つ。刺す感覚は良く判るが、痛みはない。やがて切開をしている感じがする。 更にあちこちが圧迫され、鋏で切り取っているのがわかる。肉がかなり引っ張られ、特に膀胱の辺りが強く押され痛みを感じる。かなり肛門は押し広げられているのだろう。その間五分毎に、自動血圧計が腕を締付け、血圧を測定してゆく。 何カ所か強く引っ張られるが、縫合をしていると思われる。比較的冷静に手術の想像ができる。 手術時間約30分。医師が切除した痔核を見せてくれた。一つはレバーのような感じの、紅みのある小指大の肉片であった。他の二つは萎んでしまっていた。私は3個の痔核が有ったようだ。 手術台の横におかれた移動台の上に、仰向けに回転させられT字帯と呼ばれる褌をつけられる。やがて、ガウンにくるまって病室に運ばれる。天井の模様が目まぐるしく流れ、最初の夜に見たアスベストの天井に着くと、看護婦が4人掛かりでベッドに投げ込む。その後、静かに1000CC(2袋)の点滴を行う。 手術後、四時間を過ぎると、水分を取る事が許される。更に四時間が過ぎると、歩行して小便に行って良い事になる。 PM6:30頃麻酔が切れる。激痛が襲う。痛み止めを服用するがまるで効き目がない。ナースコールをして痛み止めの注射をしてもらった。他のベッドでもナースコールをしている。膀胱を圧迫した感じで、かなり強く痛む。小水を催すが出ない。溲瓶を当てるのだが、痺れていて結構難しい。感覚が無いの だ。 PM9:00再び痛み止めを射ってもらう。夜中に、肛門の筋肉がピクピク動き気持ちが悪い。うつ伏せになって一夜を耐える。肛門が半分開いているような、排便を中途で止めた感じが続き、とにかく気持ちが悪い。小便が出たい感じも続いている。 枕をしていると、後で麻酔の後遺症が出て、そうとうの頭痛になるらしい。枕は看護婦がどこかにやってしまっている。この状態であまり動くと、きまって頭痛で悩む事になる。 ◎ 第3日目 5月7日(土) 手術後1日 AM6:00小水が出ないので、水をコップで5杯飲む。 AM7:00小水とガスが出て、大小便中途の感じから解放される。膀胱や腸が麻酔から醒めてきている。 食事が始まる。(文末に献立記入) AM9:00点滴を2袋(1000CC)入れる。激痛からは、多少は解放されたが、相当痛い。 PM3:00診察を受ける。明日より風呂に入って良いとの事。 PM4:00頃失禁の内に、液状の便が出る。腹がゴロゴロ鳴る。自分で持ってきた整腸剤を飲んだが、後で便が硬くなり、排便しにくく苦労する結果になってしまった。 適当な時間毎に、肛門に付けたガーゼを自分で交換するのだが、ガーゼを通過した体液(血液混じりの浸透液)で、T字帯が相当汚れた。T字帯は、1日1枚しか渡されず、あとは自分の下着を使う。当然ブリーフは不適である。パ ンツかステテコが良い。 夜は肛門がヒリヒリと、擦りむき傷のように痛む。この痛みは退院しても続くのだ。 この頃より、痛み止めのカプセルでも効くようになるので、痛いとき適時飲む。(最初の痛みは、注射でなければ効かない) ◎ 第4日目 5月8日(日) 手術後2日 午前中の点滴は、1袋目の速度が遅くかなりの時間が掛かる。500CCで40分ぐらいがちょうど良いとの事。点滴時の注意は、小水を済ませておく事である。2袋では、約1時間30分も掛かるのである。 PM1:00初めての風呂は、気持ちがよいものだった。ここの風呂は浴槽が5個あって、自分でお湯を汲んで使用し、自分で水を抜いて洗っておく。風呂の水が肛門にしみるかと思ったら、さに有らず。外部に切り傷は、あまり出ていないようだ。そっと患部に触ってみると、縫合糸がチクチク感じる。 見舞い客にロビーの椅子で会っていたが、長く座っていられない。傷はだいぶ良いが、まだまだ痛く、足は引きずるようにして歩く。 今日は小水3回だけ。やがてくる排便の痛みが恐ろしい。 ◎ 第5日目 5月9日(月) 手術後3日 早朝、暑かったので窓をあけていたら、急に冷え込みくしゃみをした。このくしゃみ、極めて肛門にひびく。1時間ほどピクピクと倒れ込んでいた。激痛が走る。くしゃみ、咳は要注意である。 今日の点滴は適度の早さであった。風呂はやはり気持ちがよい。血行が良くなるのだろう。 夕方、小指程度の便が出る。この程度でも痛い。夜、傷口がかなり痛く、痛み止めを、ときどき服用する。 ◎ 第6日目 5月10日(火) 手術後4日 早朝、排便を試みるが出ない。その後かなり傷口が痛むので、朝から風呂に入って暖めた。点滴の前に風呂に入ると、血行が良くなりすぎて、いけないのだが、あまり痛いので小時間湯につかった。 今日から点滴が1袋になる。点滴後排便を試みると、おたまじゃくし程度の便が15匹くらい出た。肛門が大きく開く事が恐ろしく力めない。それに、力むにも激痛が走り無理なのだ。午後も風呂で暖めた。 食事のご飯が、お粥から普通ご飯なる。 痛みと、排便との戦いになる。 ◎ 第7日目 5月11日(水) 手術後5日 今日こそは排便をしようと、悲壮の決心をする。牛乳5本を買い込む。朝から冷たい牛乳を飲む。腹がゴロゴロいいだすが、便意をもようさない。点滴後、少しは腸を動かそうと、何度も階段を昇ったり降りたりしてみた。 昼食後、更に牛乳を飲む。ますます腹がゴロゴロするが、排便できず苦しい。午後の診察で苦しさを訴えると、浣腸をしてくれた。排便の恐怖の中、一瞬にして、ズドンと爆発的に排便が行われた。あまり早いスピードなので痛みをあまり感じなかった。その後、牛乳のせいで液状の排便が2度続き、腹痛が残った。 やっと、排便が出来たのだが、ゆっくりと肛門を開く事が出来ていないので、その後また、苦労する事になった。 ここで、いくつかの、排便の過程を記しておこうと思う。 私は同時に大腸ポリープを摘出したため、手術後3日間は、お粥を食べていた。しかし、一般的には翌日より、普通の食事を取る事になる。そのためか、早い人は手術後1日目の夜、あるいは2日目に排便をする。腸の丈夫な人は、それなりの堅さをもった便が出るわけである。この段階で傷は、ほとんど癒えておらず、気絶しそうな激痛があるらしい。 3日目、4日目に排便があっても相当の痛みがある。排便が延びれば延びるほど、腸は水分を吸収し、便はどんどん硬化して出にくくなる。 便のでにくい人には、白色の下剤をくれるのだが、この薬品は便の水分を増やし、柔らかくするもので、あまり効果はない。それでも出ない人には、ピンクの色の下剤をくれる。これは腸に刺激を与えるもので、けっこう効果があるが、腸の弱い人は腹痛が続き、8回も排便に行った人もいる。回数が増えるぶん、痛みを多くあじわうことになり、かなり苦しいようだ。 とにかく一度、肛門を広げなければならないのだが、自力で排便をした人は、快復が早いようだ。水分を多く取る事、バナナ等の通事の良くなる果物を食べる事、牛乳を飲む事等々、各自工夫を要する。 便が肛門まできているにも関わらず、排便できない場合は、浣腸により排出をする。それでも出ない人が間々ある。この場合、肛門に座薬を数個挿入し、テープを貼り、何時間か我慢をして排便をする。ここまでやっても出ない人の話は聞かない。座薬を挿入するときは、かなり痛いとの事だが、排便時には座薬によって、肛門の痛みが相当軽減されるとのことだ。 最初ほどではないが、その後も排便では苦しむのである。痛み止めを飲んでから15分ほど経って排便にゆく事は、薬が効いて有効である。 ◎ 第8日目 5月12日(木) 手術後6日 朝、小型の鱈子大を2本、自力で排出した。私は最初お粥を食べていたせいか便が柔らかく、肛門が大きくなっていないようだ。排便後膀胱付近が相当痛む。 昼食のおかずに、てんぷらがでた。ここのところ、油ものをあまり取っていなかったせいか、ひどい胸焼けになった。その後、腹痛を催し排便があった。すぐに痛み止めを飲み、痛みに耐えた。今日から風呂にバスクリンをいれて入浴することにした。そのうちみんなが、まねをするだろう。 PM8:00頃痛みが和らいだが、一時的なものだろうか。 診察時に摘出ポリープの細胞結果を知らされる。良性であった。1年後に摘出跡を調べるので連絡をするから、検査に来るようにとの事だった。 ◎ 第9日目 5月13日(金) 手術後7日 毎日のパン朝食が嫌になり、カップメンにした。シシャモ大の便が3匹排出される。点滴は今日で最後となる。午前中に海水浴の浮き輪のような、空気座布団を購入し使用した。至って快適である。もっと早くから使い始めれば良かったと後悔をする。 今日は風呂のボイラーが故障したとの事で、風呂がなかった。けっこう痛手である。夕方下痢をして、かなり切り傷が痛んだ。下痢による肛門の刺激は危険なのだ。 ◎ 第10日目 5月14日(土) 手術後8日 朝起きると傷口がかなり痛んだ。特に11時方向が痛い。ここをいちばん大きく切ったのだろうか? パンの朝食を残し、カップメンとお握りを食べる。バスクリン風呂に入り気持ちがいい。点滴がないと、自由時間が多くできる。風呂から出ると親指大の長い排便があった。風呂で血行を良くしてからの排便は有効である。まだまだ痛み止めに、頼らざるを得ない。 明日退院なので、午後から少し荷物を運んでもらう。 ◎ 第11日目 5月15日(日) 手術後9日 退院日 朝食を取り、排便に向かうが出ない。痛みだけが残った。最後の風呂に入り退院診断を受ける。 痔手術の退院は、完治してからではなく、中途退院である。みんながみんな、まだまだ痛いまま、完全に排便感覚が快復しないまま、退院するのだ。後は自宅で治してゆかなければならない。病院にいても、自宅にいても、時間が経過しなければ直らないのだ。 手術してから、交換し続けているガーゼの枚数は、百枚近くになるだろう。 AM10:00便意をもようしつつ、排便できない不快感のうちに退院をする。 その後の、一般的な快復パターンは、 痛み止めが要らなくなるのは、 手術後14日目位、 ガーゼ交換が要らなくなるのは、 手術後21日目位 との、医師の話であった。 退院後 4日目 5月19日(木)及び その後 7日目 5月25日(水) 14日目 6月 9日(水)に診断を受けなければならない。 ★自宅療養編 ★ ◇ 第11日目 5月15日(日) 手術後9日 自宅療養1日 (退院日) PM8:00硬い便排出。拳を握りしめて行う。痛み止めに頼る。朝から続 いた不快感はとれる。 ◇ 第12日目 5月16日(月) 手術後10日 自宅療養2日 AM9:00硬い便排出。昨日よりやや楽に出る。傷は痛痒い。ガーゼの代わりにペーパーにしたが、交換は頻繁。風呂二回療養。痛み止め使用せず。 ◇ 第13日目 5月17日(火) 手術後11日 自宅療養3日 AM9:00普通の硬さの便多く排出。やはり排出時にはやや痛い。痛み止めを、今日も使用せずに我慢できる。風呂2回療養。夕食に鰯のフライを食し胸焼けに陥る。油に弱くなっているようだ。 ◇ 第13日目 5月18日(水) 手術後12日 自宅療養4日 AM9:00普通の硬さの便排出、少な目。 夕方約1km程散歩し、帰宅。その後かなりの出血をする。肛門内部での出血らしく、ガスが出るとき出血した。MP6:30頃、病院に行き診察を受ける。今日は風呂に入らず、明日診断するまで、静かにしているようにとの事。夜中に出血が多ければ、何時でもいいから、連絡して来るようにとの事であったが、何とか無事であった。 原因が2つ考えられる。1つは、久しぶりに長く歩き、どこかが切れた。もう一つは、昼食にべた奈良漬のアルコールが何らかの影響を与えた。 いずれにしても、順調でなくなった事は確かだ。 ◇ 第14日目 5月19日(木) 手術後13日 自宅療養5日 朝の排便後、括約筋に激痛が走り暫し苦しむ。 AM10:00退院4日目検診にゆく。昨日の出血は問題ないとの事。だんだん良くなるから、安心して養生するようにとのことでであった。同日に退院した人と病院で会ったので、2人が入院していた部屋に行ったが、知っている 入院患者は1人だけになっていた。この人も、明日は退院である。肛門病院の世代交代は早い。病室待ちの患者の多いのに驚く次第だ。 帰宅後、風呂に入り暖める。 午後、歩く練習をする。40分位歩いたが、出血はなかった。 ※ 医療費を支払う。 ◇ 第15日目 5月20日(金) 手術後14日 自宅療養6日 朝の排便は下痢ぎみだった。傷口が痛む。昨日の昼食で、油のきついラーメンを食べた結果だ。油にはかなり弱くなってしまっているようだ。 午前中電車に乗る練習として、入間まで行った。少しあちこち歩き帰った来た。どこかでひと休みするときのために、空気をいれる円座を持って行ったが正解であった。電車の座席には何とか座っていられたが、電車待ちで立っているのは、結構辛いものがある。 切開した傷口を縫合していた糸が、三本排出されてきた。昨日の診察の時糸を切ったのだろうか? PM11:30頃腹痛になり排便する。この頃、一日の時間が長く、昼夜の区別があまり無くなっている。 ◇ 第16日目 5月21日(土) 手術後15日 自宅療養7日 朝、縫合糸が1本、ペーパーに付いていた。痛みはだいぶ薄らいだが、排便の後は痛痒い。傷口からの分泌液が少なくなってきた。風呂に入り血行の良くなった状態で、長く座っていたら痛みが出た。風呂上がりは横になった方がいいようだ。 ◇ 第17日目 5月22日(日) 手術後16日 自宅療養8日 退院して1週間が過ぎた。この時期はもう、快復速度もゆっくりしたものになる。浸透液の量は減ったが、まだまだ止まりそうにもない。両足にもまだ力が入らない。 昼間の電車の空いている時間を見計らって、池袋まで立って乗ってみた。車両がブレーキをかけると、慣性のgが働き、結構お尻にひびくのである。健康の時は何一つ感じなかった事が、状態が少し変わっただけで、いろいろ感じるものだ。 久しぶりの街は光線が強く、夏をまっていた。しかし夏を迎えるには、鬱とした梅雨を越さなければならない。自分も全快までに、まだ波乱でもあるのだろうか。帰りは座って帰ってきた。 それにしても、これほどの期間アルコールを摂取しないでいることは、中学生以来ではなかろうか。 ◇ 第18日目 5月23日(月) 手術後17日 自宅療養9日 手術直後以来のくしゃみが出た。肛門に圧力のかかるのを強く感じる。あの時の痛みはまるでないが、ややひびく。これが無くなくなれば全快なのだろう。排便後は、痛み2、痒み8の割合で、少しの間、耐えがたい状態になる。 退院後毎日風呂に2回入っているが、とにかく入浴は療養に最高である。 ◇ 第19日目 5月24日(火) 手術後18日 出勤をした。手提げ鞄の中身は、空気式円座である。やはり長く座っているのはきつい。 ◇ 第19日目 5月25日(水) 手術後19日 定期検診にゆく。 「状態はどうですか?」 「まだ、グジュグジュが出てるんですけど」 「もう少しの間、しょうがないね。中山さんのは大きく切ったから」 突如、肛門に激痛が走った。 「痛い!先生何をしたんですか?」 「肛門を広げたんだよ」 この時期、排便が心配で、軟らかい便になるようにする患者が、ずいぶんと多いらしい。そうすると、肛門が小さくなって、悪い結果を招くので、肛門を広げるのだとの事であった 傷の直りを早くする軟膏を、2週間分くれた。最初の頃は薬に頼らず、自然に回復させる方がよいのだろう。今ごろになって、やっと薬をくれた。 病院の待合い室で、何人かの患者と話をした。いつのまにか、病気の状況や手術、療養に付いて、詳しく説明をしている自分に気がついた。手術待ちの患者にとって、私は先輩になっていたのだ。 同室で過ごした、6人の患者仲間(同窓会が出来ている)の内、2人に会った。話は何やら入院していた時を、懐かしむような話になってしまっていた。そういえば、入院をしていたのが、かなり前の出来事のような気がすることがある。これで何年か経つと、 「あんな手術は、アッと言う間に終わるよ。痛いのは切って麻酔が切れたときと、最初の排便の時だけで、どうって事ないよ」 なんて、言っているのだろうか? (喉元過ぎれば熱さ忘れる) こんな芸当が出来るから、人間なんてものは、結構それなりに、生きて行けるのだろう。 全快するには、まだ日数が掛かるのだろうが、今日をもって、一連の記述を終了しようと思う。同病で悩んでいる人や、これから手術をする人の、いくらかの参考になれば幸いである。 【病院食事表】 参考 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・月/日・ 朝 食 ・ 昼 食 ・ 夜 食 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・5/5・自宅 ・自宅 (入院) ・流動食(牛乳、身無 ・ ・ ・ ・ ・ 味噌汁)・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 6・無(ポリープ摘出)・無 (痔摘出手術) ・無 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 7・パン一切 ・五分粥 ・五分粥 ・ ・ ・紅茶 ・コロッケ2個 ・白身魚ムニエル(切り身)・ ・ ・ゆで卵 ・お浸し ・ゴボウきんぴら煮つけ ・ ・ ・レタス少々 ・味噌汁 ・豆腐油揚げ味噌汁 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 8・同上 ・五分粥 ・五分粥 ・ ・ ・ ・鮭焼き魚 ・餃子5個 ・ ・ ・ ・コンニャク田楽 ・シラスおろし ・ ・ ・ ・味噌汁 ・ナメコ味噌汁 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 9・同上 ・八分粥 ・八分粥 ・ ・ ・ ・春巻き2個 ・豚肉しょうが焼き ・ ・ ・ ・胡瓜シラタキ酢和え ・野菜お浸し ・ ・ ・ ・味噌汁 ・味噌汁 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 10・同上 ・普通ご飯(少量) ・普通ご飯、ナメコ味噌汁・ ・ ・ ・たぬきうどん ・秋刀魚開き焼き魚 ・ ・ ・ ・ザー菜 ・ハム、蒲鉾 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 11・同上 ・普通ご飯、味噌汁 ・普通ご飯、味噌汁 ・ ・ ・ ・鮭のフライ ・おでん ・ ・ ・ ・冷や奴 ・野菜お浸し ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 12・同上 ・普通ご飯、味噌汁 ・普通ご飯、味噌汁 ・ ・ ・ ・てんぷら ・鱈切り身焼き魚 ・ ・ ・ ・胡瓜ワカメ酢和え ・肉じゃが ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 13・同上 ・普通ご飯(少量) ・普通ご飯、ナメコ味噌汁・ ・ ・ ・たぬきうどん ・中型シュウマイ3個 ・ ・ ・ ・ザー菜 ・山芋千切り ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 14・同上 ・普通ご飯、味噌汁 ・普通ご飯、味噌汁 ・ ・ ・ ・コロッケ2個 ・銀鱈(切り身)ムニエル ・ ・ ・ ・モヤシお浸し ・ゴボウきんぴら煮つけ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 15・同上(退院) ・自宅 ・自宅 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
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