夢経さんの家

おねしょの話


おねしょの話

寝小便』と書くと、何となく汚い気持がするものだが、『おねしょ』と書けば、何となく、ほのぼのした感じになってくるのは私だけだろうか。医学用語では、『夜尿症』というらしい。『症』という文字がつくのだから病気の一つなのだろうが、どうにも私には信じられない。
 私の娘は三才になると、ほとんど、おねしょをしなくなっていた。私のすぐ下の妹は、幼稚園か小学校低学年まで続いていた記憶がある。ところが自分は、けっこう遅くまでしていた。
 家では通称『おねしょ蒲団』と呼ばれていた、一平方メートル程の小さな敷き蒲団を何時も敷いていた。中学二年で宇都宮に越した時、まだ荷物の中に入っていた。
 朝になるとお尻の廻りが妙に冷たい。そんなときはいつも、辺りが湿地帯になっている。あわてて飛び起き、箪笥の中から下着を出し着替え、悪びれもせず学校へ行く。帰ってくると布団が干してある。
 その頃は、たいていの人が自分と同じだと思っていた。当時、誰に確認するでもなく信じていたのだ。
 小学校の修学旅行や、林間学校の時、
「寝る前には水やジュースを、絶対飲まないように!」
と、母親は釘を刺したものだ。良い子の私はその教えを守っていた。そのせいか、そういった公式の場では、したことがなかった。
 犬などの動物は、小便で自分の縄張りを主張している。自分は前世がそういった動物であって、その名残が強くあったのだろう。しかし、家で飼った犬を見る限りでは、犬小屋の中でお寝小はしていなかった。さて‥、すると自分の場合は、病気だったのだろうか?
 時々、四才になった娘が、
「おしっこが、でちゃたよー」
と、泣いて起きだしてくる。
すぐにわかるのだから立派なものだ。当時の私は、朝までわからなかったのだから。、
(よしよし、子供はそれでいいんだよ)
何か安堵感を覚える。
(人間は、年をとると子供に戻るものらしい)
もしも、それが本当だっだら‥‥。
 一抹の恐怖が脳裏をよぎっていく。