夢経さんの家

あゝ無常


あゝ無常
 その日は、秋晴れの気持ちのよい朝だった。今日はオートバイを飛ばして、赤城山の紅葉を見に行くことになっていた。関越道高坂サービルエリアで、W君とI嬢と待ち合わせをしている。三人でのツーリングだ。午前八時三十分、家からスタート。圏央道入間インターから高速に入りスピードをあげる。私のオートバイはアメリカンバイクで、時速九十キロ位が最も走りやすい。風をもろに受ける形のバイクなので、軽自動車の後について行く位の速度がちょうど良い。圏央道から順調に関越道に入る。
 花園インターを過ぎた頃、まるで轍を走っているかのような、小刻みな横ぶれが体を襲った。
(ムム!ひょっとすると‥‥)一抹の不安が。そこで止まるわけにもゆかず、だましだまし、やっと高坂サービスエリア入口まで、たどり着いた。大きなカーブを曲がるとき車体は重くなり、完全に後輪の空気が抜けた。
 そのまま、ガソリンスタンドに持ち込んだが、
「ここではパンク修理が出来ません」
と言われた。私のバイクは、スポーク形式のリムため、タイヤにチューブが入っている。
「チューブレスなら直せるんですけど」
との説明だった。となると、バイクを運ばなければならない。この辺で修理を頼めそうな店があるのは川越になる。何軒かの電話番号を調べ、バイクショップに救援を頼んだ。
 そんなことをしているうちに、W氏とI嬢が待合わせ場所についた。緊急事態を告げ、パンク修理には相当な時間が掛かるので、私は此処でリタイヤする旨を告げた。二人は私のために、おむすびを4個も置いて旅だった。その後、待つこと一時間。やっと、救援隊が高坂に着いた。川越インターから軽トラックで来てくれたのだった。
 トラックにバイクを積込み、先の東松山インターから降りて、川越のバイクショップへ直行した。パンクの修理にはチューブの交換が必要だった。バイクの運般費と修理代、合計一万五千円弱の費用がかかった。ふと気が付くと、ポケットに高速道路の通行券が入っていた。トラックに積んでインターを出たため、バイクの高速料金を払っていなかったのだ。
 痛手を受け沈鬱な思いで自宅に帰ると、午後一時を廻っていた。家に入るなり神さんが一言、
「あら、早かったわね」
 何を言ってるんだ‥ 涙 涙。
 ああ無情!